お揃いで清々しい新年を迎えられたこととお慶び申し上げます。全国的に穏やかな三賀日で、各地の神社は初詣で大変賑わったようです。
早々の年頭祝賀会に、当会会員の皆様に加えて、服部副知事、高島市長を始め、ご来賓の方々にも多数ご参集頂き、誠にありがとうございます。冒頭に金管楽器の爽やかな音色も響き、幸先良いスタートを予感させるこの集まりでございます。
国内外には依然として難問山積しておりますが、今年こそはアベノミクスの相乗効果が広く日本経済――特に中小企業――にしっかりとした活力を齎すよう祈念いたします。
ここで恒例により、年頭御発表の天皇皇后両陛下のお歌をご紹介させて頂きます。天皇陛下のお歌(御製)五首の中に「第六十六回全国植樹祭」を詠まれた次のお歌がありました。
父君の蒔かれし木より作られし鍬を用いてくろまつを植う
戦火で荒れ果てた国土の復興を期して、昭和二十五年に始まった植樹祭は昨年で六十六回を数え、石川県小松市で開催されました。実は三十三年前の昭和五十八年に同じ石川県で行われた植樹祭では、昭和天皇がスギの種をお手蒔きされていたのです。今回の植樹祭で主催者から天皇陛下に渡された鍬の柄は、当時お手蒔きのスギが生長して杉林となり、その間伐材を利用して作られたものだったのです。
その鍬で土を掘って植えられたくろまつは、やがて深い森を形成し国土保全や水資源の保護を通じて、将来の農林水産業振興に役立つのです。
一方、皇后陛下の御歌三首の内に「YS11より五十三年を経し今年」との詞書に添えて、
国産のジェット機がけふ飛ぶといふこの秋空の青深き中
のお歌がありました。言うまでもなく十一月十一日に初飛行に成功した国産旅客機MRJを詠まれたものです。戦前には世界最高性能の戦闘機「零戦」を産み出す技術力を誇った我が国は、敗戦とその後の占領期に研究開発を一切禁止されて、ジェット機製造技術競争から大きく立ち遅れてしまいました。その長き空白がやっと埋められた、記念すべき試験飛行を、両陛下も心から喜んでおられるのです。「秋空の青深き中」というご表現は、未来に向けて航空機関連技術が極められていく可能性を示唆しておられるようではありませんか。
国民と苦楽を共にするという皇室の長い伝統を、正月ご発表の御歌から改めて実感することが出来ました。戦後七十一年目を迎える今年ですが、敗戦による先人たちの苦難や、復興への長い道のりを忘れることなく、これからの国作りに私たちも参画して行くことを皆さまと共に誓い合いたいと思います。
さて中経協は本年四月に事務所を移転します。新しい拠点となるのは西日本新聞社所有で天神の中心に位置するエルガーラビルです。近年当会事業が活況を呈するとともに、現在の事務所が大変窮屈になり、皆様方に気軽にお立ち寄り頂くスペースもなくなり、心苦しく感じておりましたところ、幸い我々の最も身近な友好団体である「地域企業連合会九州連携機構」が、業容を拡大して引き続き残留するとの意向を示されましたので、後顧の憂いなく新天地を求めました。そして昨年一年間の環境改善検討委員会、移転推進委員会での作業を経て、理事会で決定した次第です。これまで長年お世話になった商工会議所ビルに厚く御礼申し上げます。
「新しい葡萄酒を古い皮袋に入れることはせじ」という言葉がマタイ伝にありますが、我々中経協の場合は四十年以上前から当会に貢献して来られた諸先輩と、最近入会した新進気鋭の経営者たちが融合しており、云わば「熟成した古酒と、搾り立ての新酒とを併せて、新しい皮袋――エルガーラビル――に収めて」一層の事業展開を計って参ります。
今後の予定をお示ししながら、会員各位への周知を計って参りますので、何卒よろしくご理解下さりますようお願い申し上げます。四月には新事務所のお披露目をご案内致しますのでどうぞご期待下さい。
尚、小林専司さんが会長を務める中経協連合会も同時に移転することになります。小早川明徳さんが会長を務める地域企業連合会九州連携機構とは事務所を異にして運営することになりますが、今後とも中経協設立からの歴史と、会存立の思想・哲学を共有することを確認しつつ、連携を続けて参ります。
終わりに
①会員相互で研鑽し協力し合いながら、経営の力を蓄える。
②四つの中経協合計で一千社超のネットワークを活用する。
③郷土や祖国の発展、特に次の時代を切り拓く人財育成に寄与する。
このような目標を掲げて活動を広げる福岡中経協に、本年も会員諸氏の積極的なご参加と、ご来賓の方々の変わらぬご指導ご鞭撻をお願いします。
平成二十八年が皆様にとって輝かしい年になるよう祈念して、新年のご挨拶といたします。
平成28年1月
一般社団法人 福岡中小企業経営者協会
会長 山口 秀範