明けましておめでとうございます。皆さまお揃いですがすがしい新年をお迎えのこととお慶び申します。そして本日は福岡中経協の会員の皆様と、地元のみならず我が国の政治経済・学術文化など各界を代表されるご来賓の方々にも多数ご来臨賜って、かくも盛大に「新年祝賀会」を開催出来ます事に心から感謝申し上げます。
今年の新年祝賀会のテーマは「和風」であります。冒頭から大宰府連雅会の雅楽で新春気分を醸成し、理事諸氏や事務局スタッフにも和服を奨励しおもてなしに努めております。また後程、浦岡香理事による「書初め」も用意していますので、皆さまどうぞこの雰囲気を存分にお楽しみください。
尚ご挨拶を賜りたいVIPも沢山お見えですが、本席では私の粗辞のみにさせて頂き、出来るだけ歓談交流の時間を確保するよう計画しました。ご了解をお願い致します。
さて年末年始の新聞を見ても、雇用と株式市場は絶好調、企業収益は上り調子にあり、本年中には「デフレ脱却宣言」も期待されるとの記事が並んでいます。こうした追い風をしっかり実感できるような一年となるよう、ご来賓各位と当協会会員企業・団体の一層のご発展を年始に当たり祈念いたします。
平成三十年と言う大きな節目の今年は、また明治維新百五十年という記念すべき年に当たっております。黒船の来寇によって急速に覚醒した我が先人たちは、欧米列強に引けを取らない近代国家樹立に全力を傾け、やがてそれを成し遂げました。
そして百五十年の折り返し点であった今から七十五年前は、大東亜戦争の真っ只中にありました。その苦しい戦いに敗れて、焼け跡とガレキの中から奇跡的な経済復興を果たした後、紆余曲折ありながらも今日の平和と繁栄を達成しています。近代化の百五十年を振り返ってわが民族の底力を糧としつつ、これからの時代を切り拓くよすがにしたいものです。
百五十年前に、また七十五年前にも一歩誤れば滅亡に向かうほどの「国難」がありました。そして現代を生きる私たちの眼前にも「国難」は否応なしに迫っています。その一つは北朝鮮のなりふり構わぬ核開発と、それを取り巻く周辺諸国の動向です。これらは明らかに我が国の安全保障を脅かしており、日本はその自衛力、抑止力を高めて行かねばなりません。
将来の日本の基本的国家システムを構築するには、国民的レベルでの憲法論議は待ったなしです。ところがそうした国論形成を妨げているのは国内の多くの憲法学者やマスコミ報道であるという構図こそが、残念ながら国難の最たるものでしょう。私たちも他人任せにせず、身近な周囲に向けて正論を発信し続けて、健全な世論形成に参加する年にしましょう。
もう一つの「国難」は「少子高齢化」です。私自身も団塊の世代の一員で、やがては後期高齢者と呼ばれ「2025年問題」に加担することになる定めですが、こうした我々世代に課された使命は、次の世代・その次の世代の激励と育成にあると肝に銘じております。
では具体的に何をなすべきなのか。それは、先に生れた者が後から来る人々にさまざまな「歴史」を語り伝えることに尽きるでしょう。世はAI(人工知能)時代の到来を告げ、これまでの社会システムも生活システムもやがて一変するだろうと、私も夢のような未来に心躍らせる一人ですが、AIの判断力を左右するのは実は厖大な過去のデータなのです。
であれば、私たち人間がAIに取って代わられない分野とは、過去の歴史を学び、先人の生き方を偲ぶ感性に有ると言って過言ではないでしょう。
福岡中経協では吉田松陰の『講孟劄記』を毎月の早朝勉強会で読んでいますが、これなども歴史を学ぶ感性を磨く一助と信じ継続しています。
「少子高齢化」を克服する手立てとして、安倍首相は昨日の年頭会見の中でも「誰もが、その能力を最大限に発揮できる「1億総活躍」社会をつくり上げる」と提唱していますが、これは実に、百五十年前に明治天皇が、新政府の根本方針を国民に率先して天地神明に誓われた「五箇条の御誓文」の中の第三項「官武一途庶民ニ至ル迄,各其志ヲ遂ケ,人心ヲシテ倦マサラシメン事ヲ要ス」――役人軍人から一般国民に至るまで、一人ひとりが自分の志を実現し、投げ遣りな人生を送る人が出ないようにしよう――まさに「1億総活躍」そのものではありませんか。
明治の先人たちは、この「御誓文」を身に体して、積極果敢に既成概念を打ち破り、国境を越えて日本精神を発揮したのです。こうした歴史を思い起こすことは、そのステージは異なれども次の百五十年に向かう入り口に立つ私たちに大きな力を与えてくれるに違いありません。
福岡中経協は本年も年明け早々から各委員会を中心に活発な相互啓発・交流親睦そして社会貢献の事業を進めて参ります。その一環として今月のカンボジア視察、三月十一日の東日本大震災慰霊祭列席そして秋の第七次皇居勤労奉仕団もやがて募集を開始します。どうぞ皆様方の積極的なご参加をお待ちします。
元日の新聞に天皇皇后両陛下のお歌が八首発表されています。云わば両陛下から我々国民へお心のこもったメッセージが届いている訳ですが、とりわけ次のお歌は、福岡に住む私たちには格別のお年玉と受け止めたく存じます。
第三十七回全国豊かな海づくり大会
くろあはびあさりの稚(ち)貝(がひ)手渡しぬ漁(すなど)る人の上思ひつつ
宗像で漁業に従事する人々を「すなどるひと」という美しい大和言葉で労われ、豊かな海の幸を願って下さる大御心の伝わってくる御製です。
残り十六ヶ月となる平成の御代の平安を祈りつつ、予め予定の示された御代替わりという今年から来年にかけて、日本の国柄を実感出来る稀なる期間を、お互いに元気で社業発展と地域創生に努めて参りましょう。
どうぞ本年も福岡中経協をよろしくお引き立てください。年頭に当たりご挨拶申し上げました。
平成三十年一月
一般社団法人 福岡中小企業経営者協会
会長 山口 秀範